抄録
西洋の近代化学が本格的に日本(長崎)に入ってきたのは江戸年代の終盤から明治時代の初期であった.その後,選ばれた優秀な学生がドイツを軸に欧米の大学に留学して,西洋の有機化学を学んだ.帰国後,西洋化学の単なる模倣でなく,日本で独創的な有機化学の基礎を築いてきた.まさに,有機化学の建設者と言える.
同時期に政府も大学制度などを段階的に体系化して,有機化学を学問として発展させてきた.それらが今日の日本の国際競争力のある医薬品,農薬産業の土台となった.本稿では,1900 年までに誕生した有機化学の建設者(先駆者)及び後継者が歩んできた経緯と業績を解説する.