抄録
目的:唐招提寺は,鑑真和上により創建された寺である.鑑真和上は,医学・薬学にも長けており,失明しているにもかかわらず,その嗅覚,味覚,触覚などで薬物を鑑別したとされている.今日,唐招提寺境内に薬園が再興され,その一部が公開されることとなったが,薬園を設置するに至った背景を調査することを目的とした.
方法:過去の書物,文献,報告に加えて,唐招提寺に残る書物や関係者への聞き取り調査を行った.
結果:唐招提寺の薬園は,第81代長老の森本孝順の熱い思いにより1988年に設置されたものの,金堂における平成の大修理に伴い,金堂に安置する三仏の避難場所として使用するために,1999 年に廃園となった.しかし,廃園の際に一部を岐阜県に移植し保管し,長年管理されてきた.その後,2018年に第88代長老の西山明彦の発願により薬園を復興する計画が持ち上がり,2022年3月に岐阜県に移植していた薬草を唐招提寺薬園内に再移植し,4月から薬園が一部再興することとなった.なお,薬園は2024年に完成予定とされている.
結論:唐招提寺の薬園は,寺院の維持管理のためにやむを得ず一度廃園したものの,2022年より一部再興するに至った.