薬史学雑誌
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「坐薬」:言葉の由来とその日本における受容過程
五位野 政彦
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2023 年 58 巻 1 号 p. 18-25

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抄録

序論:本稿では日本語の「坐薬」の語源,ならびに日本の近代医療でこの剤形が受容されてきた過程を調査した. 方法:次の資料を調査した.国立国会図書館デジタルコレクション収蔵史料,京都大学図書館収蔵史料,早稲田大学図書館収蔵史料,Google Books 検索結果,個人収蔵史料 結果・考察:江戸ハルマ(波留麻和解)にはオランダ語の「zetpil」の訳語として「?薬」の語があてられている.これは『金匱要略』に見られる用語であるとともに,zet:座る,pil:薬をそのまま意訳したものである.また冒頭の「ゼ」を「?」とすることで音訳も兼ねていた.しかし蘭方では坐剤は用いられなかった.明治時代の日本の近代医療導入過程において,英国医学を導入した時期に坐剤の具体的な情報がもたらされた.しかしその後のドイツ医学導入により,初版,改正日本薬局方では坐剤は収載されなかった.日本人により編纂され,医療の現場で使用されている医薬品の規定を目的とした第三改正日本薬局方に坐剤が収載された.

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© 2023 日本薬史学会
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