抄録
管理の困難さから,生薬標本の廃棄が進みつつある.我々は,標本の貴重性を示すため,緒方洪庵関連薬物研究に標本を活用してきた.まず,比較形態学的検討として,薬箱に遺された生薬の同定に使用した.特に,現在の市場で入手が困難な生薬については年代ごとの多岐にわたる標本の存在が重要となる.また,医療文化財の地域特異性の資料として,特定の企業や研究者が蒐集した「セット」標本や文献資料を統計学的な検討に供した.その結果,洪庵の薬箱の内容生薬が東洋系と西洋系の生薬をまんべんなく含んでいたことを明らかにした.さらに,測定対象として,ミュオン特性 X 線分析による非破壊分析の検討にも供した.予備検討を経て,薬箱に遺されたガラス瓶の内容物を示すことができた.今後も,生薬標本保存の重要性を示すため,標本の調査・活用を進めていきたい.