魚類学雑誌
Online ISSN : 1884-7374
Print ISSN : 0021-5090
ISSN-L : 0021-5090
三宅島におけるキリンミノの社会構造と産卵習性
Jack T. MoyerMartha J. Zaiser
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 28 巻 1 号 p. 52-69

詳細
抄録

キリンミノは単独で生活する肉食性魚類である.広範な生活域を所有するが, 個々の生活域は同種の他の個体と大部分重複する.大型の雄はとくに広い生活域を所有し, その中央の特定の場所に所在することが多い.しかしその場所は防衛されてはいず, 従ってなわばりとは見做しにくい.産卵間近な雌は上記の特定の場所内の“rendezvous sites”と名付けられえる地点で, 優位の大型の雄または低順位のやや小型の雄に日中に出会う.産卵は日没後, 沖へ向かう緩潮の流れる場所で行われる.雄は雌をめぐって争い, 毒棘で傷つけられた雄は産卵行動に支障を来すように思われる.産卵時の雌は短距離を急上昇して, 数千個の卵を含む粘液質の卵嚢を2個産出する.この粘液によって卵が捕食を免れ得ることを簡単な実験によって確かめた.また産卵時の急上昇が魚食魚の捕食を防ぐのに役立つことを論じた.

著者関連情報
© 日本魚類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top