法と心理
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司法面接結果の公判廷への顕出の可能性
(<法と心理学会第16 回大会大会企画シンポジウム> 司法面接をどう使うか─スキル、連携、法制度)
緑 大輔
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 16 巻 1 号 p. 36-42

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抄録

司法面接の結果を録取したDVD を刑事裁判において証拠採用するためには、刑事訴訟法320 条 1 項の伝聞証拠禁止原則に抵触しないか、同法321 条以下の伝聞例外の要件を充足するかの形で証 拠能力が認められる必要がある。前者として、証明力を争うための補助証拠として用いる方法が考 えられる。後者として、対立当事者の同意を得て証拠能力を付与するという方法が考えられる(刑 訴法326 条)。もっとも、事実に関する争いが深刻な場合には、上記DVD を実質証拠として用いる ことが考えられる上、対立当事者が証拠採用に同意しない可能性が高い。そのような場合には、録 取者が児童相談所職員等のように検察官以外の者であれば刑訴法321 条1 項3 号を根拠として、 録取者が検察官であれば刑訴法321 条1 項2 号を根拠として、それぞれ採用することができない かが問題となる。後者は、検察官が「罪となるべき事実」の立証を重視して司法面接を行う場合は、 司法面接の手法にそもそも馴染みにくい可能性がある。前者は、司法面接対象者が公判廷で供述不 能であること等が要件となるが、下級審の裁判例に照らして、要件を充たす可能性がある。他方で、 司法面接が前提とする事実観と交互尋問制度が前提とする事実観には距離があり、証人審問権と司 法面接の調整には困難を伴いうる。

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© 2016 法と心理学会
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