日常診療において,咽喉頭麻酔は組織生検や異物除去などの際に行われている手技である.われわれは2003年より局所麻酔下での喉頭内視鏡手術を行っているが,咽頭反射および喉頭反射の抑制が重要であり,そのためには適切な範囲に麻酔薬が到達する必要がある.局所麻酔薬の場合,投与可能な量が決められているうえに,効果持続時間も限られているため,安定した麻酔効果を得るためには一定の手順で効率的に行うことが重要となる.具体的には,始めに2%リドカイン塩酸塩ビスカスを用いて咽頭麻酔を行い,次に4%リドカイン塩酸塩液をスプレーで口腔粘膜から咽頭粘膜,喉頭粘膜へと順に噴霧し,さらに巻綿子を用いてもう一度同じ領域に塗布している.リドカイン塩酸塩は約20分で麻酔効果が減弱するとされているため,麻酔の行程は20分以内を原則としている.
これまでに福島県立医科大学で本麻酔手技を用いて316例に局所麻酔下の喉頭内視鏡手術を行ったが,咽喉頭反射が抑制できない,もしくは術中に反射が出現して手術中止となったのは16例(5.1%)であり,麻酔方法として有用であると考えられた.系統立てて行われる本麻酔手順は,局所麻酔下の喉頭内視鏡手術を成功させための重要な要素であると考えられた.