音声言語医学
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60 巻, 1 号
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総説
  • ―言語聴覚士による「養育者と子の間主観的コミュニケーション支援」―
    北 義子
    2019 年 60 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    乳児と養育者の関係性発達は出生直後から始まり,養育者によるケアがコミュニケーションのなかで与えられることによって,健全なアタッチメント(愛着)が形成される.近年,その基盤は養育者と情動を共有する間主観的コミュニケーションやコミュニケーション的音楽性にあるとされている.難聴児が自己および他者の情動や意図の認識に目覚め,養育者とのアタッチメント(愛着)を確立することは,機能的な言語発達や望ましい社会性を獲得するために重要である.この視点より,言語聴覚士の一臨床ビデオ映像を分析し,乳児期の難聴児に必要な「養育者と子の間主観的コミュニケーション支援」の一端を示し,その意義について考察した.今後言語聴覚士による間主観的コミュニケーション支援の方法が乳児期の難聴児ケアの視点から確立されることが望まれる.

  • 多田 靖宏, 谷 亜希子, 仲江川 雄太, 川瀬 友貴, 大河内 幸男
    2019 年 60 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    日常診療において,咽喉頭麻酔は組織生検や異物除去などの際に行われている手技である.われわれは2003年より局所麻酔下での喉頭内視鏡手術を行っているが,咽頭反射および喉頭反射の抑制が重要であり,そのためには適切な範囲に麻酔薬が到達する必要がある.局所麻酔薬の場合,投与可能な量が決められているうえに,効果持続時間も限られているため,安定した麻酔効果を得るためには一定の手順で効率的に行うことが重要となる.具体的には,始めに2%リドカイン塩酸塩ビスカスを用いて咽頭麻酔を行い,次に4%リドカイン塩酸塩液をスプレーで口腔粘膜から咽頭粘膜,喉頭粘膜へと順に噴霧し,さらに巻綿子を用いてもう一度同じ領域に塗布している.リドカイン塩酸塩は約20分で麻酔効果が減弱するとされているため,麻酔の行程は20分以内を原則としている.

    これまでに福島県立医科大学で本麻酔手技を用いて316例に局所麻酔下の喉頭内視鏡手術を行ったが,咽喉頭反射が抑制できない,もしくは術中に反射が出現して手術中止となったのは16例(5.1%)であり,麻酔方法として有用であると考えられた.系統立てて行われる本麻酔手順は,局所麻酔下の喉頭内視鏡手術を成功させための重要な要素であると考えられた.

原著
  • 前川 圭子, 城本 修
    2019 年 60 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    喉頭ストロボスコピーによる声帯振動評価学習教材を開発した.その有用性を検証するために,ストロボスコピー評価に関する知識量と実際のストロボスコピー評価について学習教材の訓練前後で評価した.ストロボスコピー評価に関する知識量は,学習後有意に上昇した.実際のストロボスコピー評価については,規則性の評価項目を除いて,学習後,有意な上昇は認められなかった.学習前の評価得点がすでに80%に達しており,天井効果が推測された.学習前の評価得点が中央値未満の者は,すべての評価項目で有意に得点が上昇した.学習前に評価能力の低い者にとっては学習効果が高い教材といえる.

  • ―術後3ヵ月での評価―
    櫻井 梓, 久保田 江里, 高橋 優宏, 古舘 佐起子, 岩崎 聡
    2019 年 60 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    高齢者の人工内耳装用効果の検討を目的として,75歳以上にて人工内耳手術を行った高齢者20例を対象に,単音節聴取成績を術前・術後3ヵ月時において比較した.また,65歳以上74歳以下の准高齢者12例と術後3ヵ月時における単音節・単語・文の聴取成績を比較した.

    その結果,高齢者の単音節聴取成績は術前に比べ改善を認め,准高齢者との比較では,単音節・単語において両群間に有意な差は認められず,75歳以上の高齢者であっても人工内耳の装用効果が認められた.しかし,単音節・単語については,有意差は認められないものの高齢者のほうが聴取成績が低かった.特に文の聴取成績においては,高齢者が有意に低い結果を示した.今後は加齢が聴取成績へ与える影響について,より詳細な検討を行っていく必要があり,また,長期的に成績改善が期待できるため,継続的な評価が必要であると考える.

  • ―構音速度と非流暢性頻度の測定―
    宮本 昌子
    2019 年 60 巻 1 号 p. 30-42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    クラタリングの暫定的定義では発話速度の速さと不規則さ,正常範囲非流暢性頻度の高さ,調音結合が重視され,症例の多くは吃音と合併したクラタリング・スタタリングである.本研究では,クラタリング・スタタリング群9名,LD・AD/HD・ASD群10名,コントロール群24名を対象に絵の説明課題の構音速度と非流暢性頻度を測定した.構音速度において3群間に有意差は見られなかった.自由発話等を視野に入れ,より適切な測定対象場面を検討することの必要性が明らかになった.また,正常範囲非流暢性頻度の高さがクラタリング・スタタリング群と同等に高い者が,LD・AD/HD・ASD群のなかにも存在していたことがわかった.

  • ―加齢による音声障害への対応―
    南部 由加里, 二村 吉継, 森 祐子, 平野 彩, 岩橋 美緒, 東川 雅彦
    2019 年 60 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    声帯萎縮は加齢などによって声帯粘膜固有層や筋層の萎縮をきたし,声門閉鎖不全による気息性嗄声が引き起こされる病態である.声帯萎縮に対して音声治療の効果が報告されており,当院での声帯萎縮症例に対する音声治療の効果を検討した.また職業の有無による治療効果の影響を合わせて検討した.

    声帯萎縮に伴う声門閉鎖不全と診断した症例のうち,音声治療を行い治療前後で評価を行うことができた症例を対象とした.対象症例は19例(男性11例,女性8例).治療前後のMPT,VHI,音響学的評価の各パラメータについて統計学的解析を行った.音声治療の内容はVocal Function Exerciseを主体とする包括的音声治療を呼吸法の指導を含めて行った.またオプションとしてチューブ発声,あくびため息法などを用いた.

    MPT,VHI,Shimmer,NHRは有意差をもって改善を認め,声帯萎縮に対して音声治療は有効であると考えられた.また無職群のほうが職業従事者群に比較して有意にVHIが改善しており,発声習慣が少ない者に音声治療が効果的である可能性が示唆された.

  • 安崎 文子, 柴崎 光世, 山本 佐代子
    2019 年 60 巻 1 号 p. 52-61
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/26
    ジャーナル フリー

    成人の吃音当事者の実態を調べるため,吃音を自覚し自助グループに参加している成人42名を対象として吃音検査法1)を施行した.非流暢性頻度と重症度,構音障害の有無や音読スピードの評価,さらに中核症状頻度や音読スピードを変数としたWard法を用いたクラスター分析を行った.重症度では,16名(38.1%)が正常からごく軽度であった一方,依然として吃音を気にしている隠れ吃音についての検討の余地が残された.対象者の14名(33.3%)が構音障害を重複しており,そのうち13名が側音化構音障害であった.また音読スピードの速い群は,幼児期に吃音を発症した割合が少ない傾向が考えられた.クラスター分析の結果,4グループに区分されグループAからDへと徐々に非流暢性は重症化していたが,必ずしも区分されたグループと,非流暢性頻度や重症度とは一致しなかった.音読が改善や重症度を決めるキー項目と推察された.

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