真菌と真菌症
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クリプトコックス症の糖尿病との関連
磯貝 庄
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1981 年 22 巻 2 号 p. 168-171

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抄録
Cryptococcus neoformans感染症の剖検例で, C. neoformansが膵ランゲルハンス島に好んで定着し, 内分泌細胞を侵襲することを知つた. このことは糖尿病の発症ないし増悪につながると想定されたので, この点を臨床的, 実験的に追求した. 1. 臨床例: 症例1.49歳, 男. 一次性糖尿病にクリプトコックス症が合併し, 多数のランゲルハンス島内にC. neoformansを認め, 内分泌細胞の壊死をみた. ラ島内のC. neoformansの直径は外のそれに比し, 大きかつた. 症例2.65歳, 女. 発熱で受診. 経時的に, 耐糖能障害増強し, インスリン分泌能は低下した. これはランゲルハンス島や肝にC. neoformansによる病変が生じたためと推察された. 症例3.76歳, 男. 糖尿病の有無は不明だが, ランゲルハンス島内に数個のC. neoformansがみられた. ランゲルハンス島外のC. neoformansと比べ, 同程度の大きさであつた. 2. 実験的: C. neoformansをrat尾静脈内に投与し, 15日後に糖静注負荷試験を行つた. 層殺後, ランゲルハンス島内ないしその辺縁C. neoformansが確認されたratでは, 著明な耐糖能障害とインスリン分泌能低下を示し, 二次性糖尿病を発症させ得た. 以上より, 臨床例においても, Cryptococcus症により二次性糖尿病が発症する可能性があると考えられた.
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