超音波医学
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症例報告
胆嚢壁内類円形高エコー結節を認めた3例の検討
若杉 聡平田 信人小宮 雅明北浦 幸一山崎 智子神作 慎也本間 善之加納 宣康成田 信星 和栄
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2011 年 38 巻 3 号 p. 273-282

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抄録

胆嚢壁内に類円形高エコー結節を認めた胆嚢疾患3例の臨床的特徴,画像,病理組織所見を検討した.全例に腹痛ないし背部痛など胆嚢炎に関連する症状を認めた.結節を胆嚢全体に認めた症例が2例,体部のみに認めた症例が1例だった.全例結石を認めなかった.CTは全例で行われ,単純CTでは3例中2例で結節は軽度高濃度だった.MRIは全例で行われ,結節はT1強調像で高信号を呈した.病理組織診断は,全て慢性胆嚢炎を伴う胆嚢腺筋腫症だった.拡張したRokitansky-Aschoff sinus(以下,RAS)周囲の線維化が強く,最近の炎症の存在が推察された.1例は胆嚢底部に膿瘍も形成していた.この膿瘍部分は超音波検査で境界不明瞭な淡い高エコー結節だった.壁内の類円形高エコー結節は,RAS内に充満した濃縮胆汁,結石,膿瘍に相当すると思われた.胆嚢腺筋腫症に炎症が加わるとRASの出口が浮腫,線維化で狭窄し,RAS内の胆汁の流出障害が生じ,濃縮胆汁,結石などが形成される.その過程でRASが破綻した場合,膿瘍が形成されると考えた.破綻していないRASは境界明瞭な高エコー結節を呈するが,破綻し膿瘍を形成したRASは境界不明瞭になると考えた.黄色肉芽腫性胆嚢炎は,破綻したRASや胆嚢粘膜から壁内に胆汁が流入し,膿瘍が形成され,吸収される過程で生じる.大部分は結石が原因であるが,結石を伴わない症例も存在し,今回提示した3例は結石を認めない黄色肉芽腫性胆嚢炎の原因を推察する上で重要と思われた.

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© 2011 一般社団法人 日本超音波医学会
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