超音波医学
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原著
超音波凝固切開装置のキャビテーション発生に関する基礎的検討
蜂屋 弘之大屋 優山口 匡林 秀樹
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2012 年 39 巻 2 号 p. 101-111

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抄録

目的:超音波凝固切開装置は腹腔鏡手術下などで広く利用されているが,処置部分とは異なる離れた位置の組織に損傷を与えることがあるのではないかと懸念され,その原因としてキャビテーションが指摘されている.そこで,実際の装置を用いてブレードからのキャビテーションの発生状況について検討する.対象と方法:超音波凝固切開装置ブレードの振動分布を,レーザードプラ振動計を用いて計測すると共に,水中観測においてキャビテーションの発生状況を確認し,ハイドロホンにより水中での音圧分布を測定し,超音波振動源から離れた位置にまで作用が波及する可能性について検討した.結果と考察:レーザードプラ振動計によって測定したブレードの振動分布と観察したキャビテーション気泡の発生位置の関係から,振動振幅の大きな領域から気泡が発生していることがわかった.さらに,水中でのブレード周囲の音圧測定,周波数解析から,キャビテーションが発生する可能性のある領域について,検討を行った.気泡の観察結果と音圧測定結果は整合性があり,キャビテーションが発生し,生体作用を及ぼす範囲は,最大でもブレードから数mm以内であると推定された.結論:キャビテーションはブレードのごく近傍から局所的に発生し,音響流によって移動する可能性はあるものの,キャビテーションによる直接的作用はブレード近傍に限定されると推測された.

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© 2012 一般社団法人 日本超音波医学会
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