抄録
胎児奇形のうち,上肢奇形は比較的まれな奇形であり,その中でもNager症候群,上肢の低形成にTreacher-Collins症候群に類似する下顎低形成を伴う非常にまれな疾患である.Nager症候群の出生前診断例の報告は非常に少なく,本邦での出生前診断の報告例は未だ調査した範囲では認めない.今回我々は,在胎30週にBモードおよび3D/4D超音波法を用いた胎児の詳細な観察を行い,両側の母指欠損を伴う上肢の低形成と小顎症を認めNager 症候群と出生前診断した.しかし,出生直後から遷延性肺高血圧症と著明な播種性血管内凝固を伴い,また喉頭気管食道裂(LTEC)を合併しており救命できなかった症例を経験したので報告する.