抄録
目的:vertebral artery (VA) stump syndromeの報告例は少ない.本病態における頸部血管エコーの所見を検討した.対象と方法:対象は,2005年9月から2011年5月に当院に入院し,VA stump syndromeの診断に至った7症例(男性4例,平均58歳)である.頸部血管エコーを実施し,頭部MRA,3D-CT血管造影,脳血管造影の所見と比較した.結果:入院時の頸部血管エコーで, 7例中3例で可動性血栓による閉塞,1例で閉塞遠位部に浮遊する可動性血栓,1例で閉塞遠位部の血流うっ滞を認めた.VA椎体内の血流は4例で順行性であり,流速が低く収縮期の立ち上がりがなだらかなpost-stenotic patternを呈していた.残り3例は収縮期逆行性のto-and-fro patternであった.また,4例で側副血行路とその流入部位も確認できた.頭部MRAでは2例で椎骨脳底動脈系に明らかな血管病変は認めなかった.結論:頸部血管エコーは,VA起始部の閉塞部位の性状やVA椎体内の血流パターン,側副血行路を評価できるので,VA stump syndromeのスクリーニングに有用である.