抄録
人工弁評価では,超音波の多重反射・音響陰影で,人工物の遠位の観察困難が問題である.通常の経胸壁心エコー図法(TTE)で評価困難なこの部分を,食道側,つまり反対側から評価するのが経食道心エコー図法(TEE)である.しかし,TTEでは,各断面から異常部位が比較的容易に判断できるのに対し,TEEでは異常部位の理解には熟達が必要となる.3次元経食道心エコー図法(3D-TEE)では,フルボリューム画像から2次元画面を切り出すことで,従来法にはない自由な断面からの画像取得が可能であり,今まででは不可能であった方向からの人工弁観察が可能である.心房・心室・大動脈から,人工弁の動く様を描出するsurgeon’s viewは,人工弁構造の理解のみならず,合併症や感染性心内膜炎の観察に大きな威力を発揮する.置換弁性感染性心内膜炎では,疣腫のみならず,人工弁周囲膿瘍や人工弁周囲逆流,人工弁の離開や脱着,人工弁stuckについても良好に描出可能である.人工弁周囲逆流に関して,3D-TEEは逆流部分の大きさ,位置の評価に重要な情報を提供し,surgeon’s viewによる僧帽弁,大動脈弁の弁離開部分の描出画像は,離開部の位置・大きさ・形・数についても情報をもたらしてくれる.特に,3次元のmulti planar image(MPR)の使用により,弁離開部分の範囲の正確な評価が可能である.画質や画角など未だ解決すべき部分はあるが,3次元による人工弁構造提示が,医療者間のみならず患者や他の科の医師達との情報共有を可能とし,治療の向上につながることからもきわめて重要な検査法と考える.