抄録
膵癌は予後不良であり,切除不能膵癌が60%前後を占めている.そのため,切除不能膵癌に対する新たな治療法の開発が望まれている.High-intensity focused ultrasound(HIFU)療法は,超音波発信源を多数取り付けた発信源から,超音波を腫瘍の目的部位の1点に集束させ,体外から組織の焼灼を行う治療法である.焦点領域のみを80‐100℃に加熱し,熱エネルギーおよびキャビテーションにより組織を凝固壊死させ,焦点領域以外の介在組織にはほとんど影響を与えないという治療法である.切除不能膵癌に対するHIFU治療の安全性と有効性を検証するため,Yuande Bio-Medical Engineering社(Beijing, China)のFEP-BY02 HIFU SYSTEMを用いて臨床試験を2008年12月より行っている.膵癌に対するHIFU治療には問題点もあり,さらなる検討や症例の蓄積が必要であるが,我々の検討では切除不能膵癌に対し安全にHIFU治療を行うことが可能であり,今後,予後不良な膵癌への低侵襲治療の1つとなり得る可能性が示唆された.