抄録
背景と目的:慢性腎疾患は心血管疾患(CVD)の危険因子である.腎ドプラエコー法による腎末梢血管抵抗値(resistive index: RI)は腎機能障害と関連している.我々はRIと心機能との関係を調べ,CVD患者に起こるイベントを予測するためのRIの有用性を評価した.方法と結果:腎臓のドプラエコー法と心エコー検査を計452名のCVD患者に行った.RIと,血清クレアチニンおよび推算糸球体濾過率(eGFR)との相関は有意ではあったが強くはなかった(それぞれr=0.37,p < 0.001; r=-0.42,p < 0.001).RIは,年齢,左心房容積係数,左室心筋重量係数,経僧帽弁血流の拡張早期成分(E)と拡張早期僧帽弁輪速度(e′)の比(E/e′)とは正の相関を,e′と拡張期血圧とは有意な負の相関を示した.2つのグループ,すなわち心血管イベントで入院した患者112名(A群)と,年齢およびeGFRを一致させた200名から成る対照群(B群)の間において,年齢とeGFRに差がないにも関わらず,RIはB群よりもA群において明らかに高値であった.結論:RIはeGFRだけでは十分に説明できない腎内血行動態の異常を反映する.腎臓RIは心血管疾患患者での予後推定に役立つと考えられる.