2018 年 45 巻 2 号 p. 167-172
我々は,超音波と微小気泡によるセラノスティクス技術の確立を目指している.微小気泡は診断だけで無く,治療媒体となる可能性がある.生体の血管は分岐を繰り返す複雑な構造であり,疾患部位にて微小気泡の濃度を局所的に高めるため,微小気泡は音響エネルギーの高低差に起因するBjerknes Forceを利用する.生体内での制御の自由度を高めるため,超音波音場を自在に設計することのできる2次元アレイトランスデューサを開発し,血管形状や血流方向に依存しない微小気泡の誘導法を開発中である.複数の焦点を形成し,さらにそれらの位相差を調整することにより,音響エネルギーで押すだけで無く,引き込む力を形成する試みを紹介する.さらに微小気泡の誘導を免疫細胞療法に応用するため,治療用の細胞の周囲に微小気泡を付着させた凝集体を誘導するための技術を開発している.同凝集体の懸濁液を人工血管流路に流し,超音波照射による制御の可能性を,蛍光顕微鏡にて観察した.最後に,上述したセラノスティクスを生体内で実現するため,超音波音源を体表面で把持し,超音波の照射位置を調整するための手段として,パラレルリンクロボットを用いた位置制御の現状を紹介する.