2018 年 45 巻 5 号 p. 471-480
超音波検査は簡便で低侵襲なことから,人間ドックや集団検診といったスクリーニングにも広く用いられている.しかし,膵胆道領域は解剖学的な位置関係が複雑であるだけでなく,肥満や消化管ガスにも影響を受けやすいことから超音波による描出が困難な領域である.胆道は仰臥位よりも左側臥位の方が容易に描出できることが多く,病変の拾い上げには拡大観察や高周波プローブが必須である.胆嚢は多重反射やサイドローブといったアーチファクトに注意が必要である.肝外胆管の描出は,逆“く”の字の形状で走行していることを頭に入れ,プローブを時計方向に回転させ,患者の外側(右側)に向けながら足側に進めると,乳頭近傍の遠位胆管も描出できる.膵臓は,左側臥位では膵頭部が,右側臥位では膵尾部が体表方向に移動するため,プローブを強く押すのではなくこまめに体位変換を行うことが重要である.頭部のgroove領域と鉤状突起部の病変は主膵管や胆管の拡張といった間接所見を伴わないことが多いため特に注意が必要である.さらに,膵管拡張や膵嚢胞も膵管癌の高危険群として積極的に拾い上げ,高危険群に対しては様々な体位変換や飲水法を活用して可能な限り膵全体を描出するように努力すべきである.