超音波医学
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症例報告
胎児正中心を呈した胸部異所性腎合併先天性右横隔膜ヘルニアの出生前診断例
猿渡 万里子城戸 咲甲斐 翔太朗中野 嵩大蜂須賀 正紘日高 庸博柳 佑典田口 智章加藤 聖子
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2019 年 46 巻 3 号 p. 243-248

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抄録

胸部異所性腎は稀な先天異常でしばしば先天性横隔膜ヘルニア(Congenital Diaphragmatic hernia: CDH)を合併するが,胎児診断例は少ない.胎児正中心を呈し右胸部異所性腎,右CDHの診断に至った症例を経験した.症例は32歳,1妊0産.妊娠18週の健診時に正中心を指摘した.28週の超音波検査で右胸腔内構造が左肺より低輝度を示し腫瘤性病変を疑った.MRI検査で胎児右胸腔内に右腎と肝右葉の陥入を認め,右CDHと診断した.36週の肺胸郭断面積比0.24,肺断面積児頭周囲長比2.47と肺低形成の程度は強くないことが予測されたが,CDHに準じて管理を行う方針とした.妊娠37週に帝王切開で2,812gの女児を分娩し, Apgarスコアは1分値5点,5分値7点であった.出生直後より人工呼吸管理を行い,軽度の肺高血圧を認めたが循環動態は安定していた.日齢2のCT検査で右CDHと診断し同日根治術を施行した.横隔膜背側で肝後区域が胸腔内に挙上し,腎臓は胸部の高さで後腹膜下に存在した.ヘルニア嚢に裂孔はなく有嚢性右CDHと診断した.腎臓は腹部へ還納できなかった.横隔膜,腹横筋およびGerota筋膜でヘルニア門の縫縮を行い日齢46に退院した.胸部異所性腎の胎児診断は稀だが,本症例は正中心がその契機となった.胸部異所性腎を合併した右CDHでは患側への縦隔偏位が起こりうることを認識した.

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© 2019 公益社団法人 日本超音波医学会
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