超音波医学
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46 巻, 3 号
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解説 「どうすれば超音波の生物学的作用に関する実験ができるか」
原著
  • 杉森 一哉, 沼田 和司, 岡田 真広, 二本松 宏美, 竹林 茂生, 前田 愼, 中野 雅行, 田中 克明
    2019 年 46 巻 3 号 p. 225-236
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
    [早期公開] 公開日: 2019/04/08
    ジャーナル 認証あり

    目的:慢性肝疾患患者にガドキセト酸ナトリウム(gadolinium ethoxybenzyl diethylenetriaminepentaacetic acid: Gd-EOB-DTPA)での核磁気共鳴画像 (magnetic resonance imaging: MRI)(EOB-MRI)および造影超音波を施行して,早期肝細胞癌(early hepatocellular carcinoma: eHCC)や高度異型結節(high grade dysplastic nodule: HGDN)と再生結節(regenerative nodule: RN)の鑑別に有用な特徴的所見を調査した.対象と方法:最大径が1 cm以上でかつ病理学的に診断された平均腫瘍径がそれぞれ15.5 mm,15.1 mm,14.8 mmの早期肝細胞癌(100結節),HGDN (7結節),RN (20結節)を後ろ向きに検討した.これらの結節のEOB-MRI肝細胞相の信号強度所見と,造影超音波動脈相の所見を用い,RNに特徴的な所見について検討した.結果:早期肝細胞癌100結節中98結節は,EOB-MRIの肝細胞相で低信号(n=95),等信号(n=2),高信号(n=1)を呈し,HGDN 7結節は,低信号(n=6),または高信号(n=1)を呈し,造影超音波動脈相においてはいずれも求心性血管を認めた.早期肝細胞癌1結節では,EOB-MRI肝細胞相で低信号を呈し,造影超音波動脈相で遠心性血管と求心性血管の両方が観察された.RN 20結節中18結節と早期肝細胞癌の残りの1結節ではEOB-MRIで結節中心に小さな低信号域を伴い,周囲は高信号を呈した.残り2結節のRNでは肝細胞相で高信号のみを呈し,造影超音波動脈相で遠心性血管が観察された.結節中心部の小低信号域は,造影超音波動脈相では中央から辺縁に向かって走行する肝動脈とそれに伴走する門脈に一致していた.結論:EOB-MRI肝細胞相および造影超音波動脈相での中心部の血管構造所見は,RNに特徴的な所見である可能性がある.

  • 菅谷 公男, 嘉手川 豪心, 西島 さおり, 多和田 真盛, 百名 将士, 平敷 義隆, 具志 和子, 新里 尚子, 松田 弘二, 運天 芳 ...
    2019 年 46 巻 3 号 p. 237-241
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
    [早期公開] 公開日: 2019/03/25
    ジャーナル 認証あり

    目的:著者らは骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁患者の経腹的超音波検査で膣壁が肥厚している印象を持っていた.そこで,骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁とそれらの疾患のない泌尿器科外来患者で経腹的超音波検査による膣壁の厚さ計測を試みた.対象と方法:泌尿器科外来を受診した女性患者のうち,臥位での経腹的超音波検査の正中縦断面写真からレトロスペクティブに膀胱三角部後方の膣前壁と後壁を合わせた厚さ(膣厚)を計測できた症例を対象とした.過活動膀胱患者と膀胱炎患者をコントロール群とし,膣厚と年齢の関連や,コントロール群と骨盤臓器脱群や腹圧性尿失禁群の膣厚を比較した.結果:コントロール群は178例で,年齢は64.6±18.4歳(平均±標準偏差),膣厚は9.2±2.7 mmで,年齢と膣厚に関連はなかった.骨盤臓器脱群は76例で,年齢は65.1±9.2歳,膣厚は14.7±4.4 mmで,コントロール群より有意に膣は肥厚していたが,骨盤臓器脱に対するメッシュ手術後3ヵ月では膣厚は薄くなっていた.腹圧性尿失禁群は12例で,年齢は65.1±12.0歳,膣厚は14.7±4.4 mmで,コントロール群より有意に膣は肥厚していた.尿失禁防止術の術後3ヵ月の膣厚は術前後で差はなかった.結論:膣壁の肥厚は膣に負荷のあることを示しており,骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁の存在を示唆し,骨盤臓器脱や腹圧性尿失禁の診断の一助となり得ると考えられた.

症例報告
  • 猿渡 万里子, 城戸 咲, 甲斐 翔太朗, 中野 嵩大, 蜂須賀 正紘, 日高 庸博, 柳 佑典, 田口 智章, 加藤 聖子
    2019 年 46 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
    [早期公開] 公開日: 2019/04/11
    ジャーナル 認証あり

    胸部異所性腎は稀な先天異常でしばしば先天性横隔膜ヘルニア(Congenital Diaphragmatic hernia: CDH)を合併するが,胎児診断例は少ない.胎児正中心を呈し右胸部異所性腎,右CDHの診断に至った症例を経験した.症例は32歳,1妊0産.妊娠18週の健診時に正中心を指摘した.28週の超音波検査で右胸腔内構造が左肺より低輝度を示し腫瘤性病変を疑った.MRI検査で胎児右胸腔内に右腎と肝右葉の陥入を認め,右CDHと診断した.36週の肺胸郭断面積比0.24,肺断面積児頭周囲長比2.47と肺低形成の程度は強くないことが予測されたが,CDHに準じて管理を行う方針とした.妊娠37週に帝王切開で2,812gの女児を分娩し, Apgarスコアは1分値5点,5分値7点であった.出生直後より人工呼吸管理を行い,軽度の肺高血圧を認めたが循環動態は安定していた.日齢2のCT検査で右CDHと診断し同日根治術を施行した.横隔膜背側で肝後区域が胸腔内に挙上し,腎臓は胸部の高さで後腹膜下に存在した.ヘルニア嚢に裂孔はなく有嚢性右CDHと診断した.腎臓は腹部へ還納できなかった.横隔膜,腹横筋およびGerota筋膜でヘルニア門の縫縮を行い日齢46に退院した.胸部異所性腎の胎児診断は稀だが,本症例は正中心がその契機となった.胸部異所性腎を合併した右CDHでは患側への縦隔偏位が起こりうることを認識した.

  • 吉田 泰子, 角田 博子, 塚本 徳子, 向井 理枝, 剱 さおり, 森下 恵美子, 喜多 久美子, 山内 英子, 野嵜 史, 鈴木 高祐
    2019 年 46 巻 3 号 p. 249-252
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
    [早期公開] 公開日: 2019/02/22
    ジャーナル 認証あり
    濃縮嚢胞は日常臨床や検診では非常によく遭遇し,頻度の高い所見である.今回,エラストグラフィで歪みの低下を認めたため要精検としたが,最終的に濃縮嚢胞であった非典型例を経験した.症例は40代女性,左乳房11時半方向に縦横比の大きな不整形の低エコー腫瘤を認め,後方境界線の断裂が疑われ,Bモードで悪性を考慮する所見であった.カラードプラで辺縁に血流信号を認め,エラストグラフィでelasticity score 4,fat-lesion-ratio (FLR) 17.2と歪みの低下が認められた.40代で初所見であったこともあり,カテゴリー5 (JABTSカテゴリー判定による)と判定した.針生検の結果,病理組織学的に濃縮嚢胞に合致する所見が得られた.生検後約一年後の超音波では,同部位に平坦化した腫瘤を認め,悪性を示唆する変化はなかった.Bモードで非典型的な濃縮嚢胞症例で,エラストグラフィによって悪性寄りに判断してしまう偽陽性例があることを知って診断していくことが重要である.
  • 中村 桂子, 野田 諭, 福田 雅代, 武田 節子, 藤岡 一也, 森崎 珠実, 柏木 伸一郎, 高島 勉, 小野田 尚佳, 大平 雅一
    2019 年 46 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/16
    [早期公開] 公開日: 2019/03/01
    ジャーナル 認証あり
    ソナゾイド造影超音波検査(contrast-enhanced ultrasonography: CEUS)は腫瘤内の微細血流を検出でき,乳房腫瘤性病変の良悪性の鑑別,術前治療の効果判定,病変の広がり診断に有用である.しかしこれらは乳癌全般に関する報告であり,特殊型乳癌である粘液癌におけるCEUSの有用性の報告は少なく,一定の見解が得られていない.今回,乳腺粘液癌4例に対してCEUSを施行し,病理組織所見と超音波像を比較検討したので報告する.2014年10月から2016年12月に当院でCEUSを施行し,針生検あるいは切除標本にて粘液癌と診断された4例を対象とした.診断装置はGE Healthcare社製LOGIQ E9,プローブはML6-15-Dを使用し,ソナゾイド(0.015 ml/kg)を注入後,約1分間断面を固定して観察した後,病変全体のスイープスキャンを行った.病理にて純型粘液癌と診断された1例はCEUSにて明らかな染影を認めなかった.一方,混合型粘液癌と診断された3例では不均一な染影を認めた.純型粘液癌と混合型粘液癌で染影所見に相違がみられた.混合型においては,粘液に腫瘍細胞が浮遊する純型の部分と間質に腫瘍細胞が浸潤する部分の混在の様子を反映して,CEUSにおいて不均一で多彩な染影所見を呈したものと考えられた.
今月の超音波像
LETTER TO THE EDITOR
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