超音波医学
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症例報告
造影超音波検査の後血管相で不整形高エコー像を認めたPD-1抗体薬に起因する肝機能障害の1例
小坂 正成岩堂 昭太詫間 義隆植松 周二岡本 良一皆木 正人山崎 理恵市村 浩一荒木 康之
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2019 年 46 巻 4 号 p. 353-362

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抄録

症例は60代,男性.左舌癌・頸部リンパ節転移に対し,切除術とリンパ節郭清が施行され,2ヵ月後に局所再発,骨転移のため化学療法施行されるもProgressive Diseaseと効果判定された.免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブを使用し,3クール投与後,ASTとALT高値のGrade4の肝機能障害(CTCAEv4.0)が出現した.発症日の造影MRIにて肝S2に腫瘤を認めたが,その他の部位に血流異常は認めなかった.第8病日,ソナゾイド造影超音波検査で,後血管相において肝実質に不整形な高エコー像が不規則に分布していた.発症日よりプレドニゾロン,第8病日よりミコフェノール酸モフェチルの投与を開始しASTとALTの改善を認めたが,徐々にビリルビンの上昇を認めた.第10病日に超音波ガイド下肝生検を施行し,肝実質に一様にCD3陽性細胞やCD68陽性細胞の軽度増生を認めた.第42病日に造影超音波を再検したが,前回と変化なく,第43病日に超音波ガイド下肝生検を再検し,前病理所見に加えて胆汁うっ滞増悪所見を認めた.肝機能障害改善に合わせて免疫抑制剤の用量の漸減と中止を行ったが,サイトメガロウイルス肺炎を発症し,第66病日に死亡した.ソナゾイドによる造影超音波の後血管相において本症例のような不整形な高エコー像を呈す画像所見の報告は少なく,肝機能障害を合併したきわめて稀な症例を経験したため報告する.

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© 2019 公益社団法人 日本超音波医学会
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