2022 年 49 巻 1 号 p. 5-15
Stiffness parameter β(stiffness β)は血圧に依存しない血管弾性の指標として血管径,拍動幅と血管内圧から算出される.血管径の測定は超音波でRF-tracking法またはM-mode法で行っている.対象血管は総頸動脈,椎骨動脈,上行大動脈および胸部下行大動脈の報告がある.血管機能検査の中でstiffness βは検者内と検者間の変動係数がほぼ10%以内と良好である.計測に用いる血管径を外膜間距離または内膜間距離とするかで異なり,拍動幅も計測装置により若干の差異がでるので,診断や研究では機器と測定法を統一することが望まれる.総頸動脈の内膜間距離よりも外膜間距離の方が年齢との相関が高い.内膜間距離は内中膜複合体が加齢で肥厚するために減少することがあるので,動脈のスティフネスを評価するには外膜間距離を用いる方が適切であると考える.Cardio-Ankle Vascular Indexとの対比では,胸部下行大動脈のstiffness βとの相関は高く,総頸動脈のstiffness βとは相関はあるが大動脈ほどではない.最近の研究には,高血圧前症患者の大動脈のstiffness βが運動と生活習慣の改善で値が小さくなるなど,動脈硬化の初期変化の指標とするものが多い.血管のスティフネスは末梢への送血を良好に保つために重要であるが,加齢とともに亢進し,頸動脈のスティフネスの異常は虚血性脳血管障害のリスクになるので,早期からの動脈硬化診断にstiffness βを役立てることが望まれる.