2022 年 49 巻 2 号 p. 97-104
左室拡張機能は,様々な心疾患において予後に影響する重要な因子の一つである.心臓超音波検査によって,非侵襲的に左室弛緩能,左室充満圧上昇の有無について評価することができる.心臓超音波検査による左室拡張機能評価は,循環器疾患の診断,予後予測に有用なだけでなく,特に心不全症例においては治療方針をも左右する.そのため,個々の病態に適した複数の指標を用いて,左室拡張機能を的確に判定することが求められる.左室拡張機能は様々な指標を用いて評価される.代表的指標の一つである左室流入血流速波形は,左室弛緩能,左室充満圧だけでなく,その他様々な要素の影響を受け,変化する.それぞれの指標の特徴と限界を理解したうえで,適切に用い,解釈することが必要である.本稿では,2016年米国心エコー図学会(ASE)/欧州心血管画像協会(EACVI)より提唱されたガイドラインを用いた左室拡張機能評価と代表的な拡張機能指標の特徴と限界について概説する.