2026 年 53 巻 1 号 p. 19-30
乳腺は体表に位置するため,高周波プローブを用いた高分解能な形態観察が可能であり,病変部の詳細な評価と診断に有用である.しかし,乳房構成は年齢や個人差により多様で,正常構造と病変の鑑別が困難な場合も少なくない.本総説では,乳腺の皮下組織,クーパー靭帯,腺葉・小葉構造,終末乳管小葉単位(TDLU)の解剖と超音波所見を概説し,正常構造のバリエーションや加齢による変化,病変との鑑別のポイントを示す.また,乳管や小葉周囲の間質は,超音波上低エコー領域として描出され,glandular tissue component(GTC)と呼ばれている.乳癌発症リスクとの関連性の報告や,GTCが高い症例はマンモグラフィ上も高濃度乳房である傾向があることから,GTC評価がリスク層別化乳癌検診として有用であることが期待されている.乳房超音波は,高周波であるがための超音波の減衰の影響が強く,撮像方法が診断に大きく影響する.基本となる検査体位,プローブの持ち方や圧迫の強さ,操作範囲や速度,動的検査の活用,血流情報やエラストグラフィでの注意点など,診断精度を高めるための操作手技について解説する.正確な診断と不要な精密検査の回避のためには,乳腺の詳細な解剖と生理的変化の理解,超音波像との対応付けが不可欠であり,日常診療に役立てていただければ幸いである.