超音波医学
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精巣上体乳頭状嚢胞腺腫の1例
石黒 はるか丸上(高橋) 亜希丸上 永晃三宅 牧人藤本 清秀藤井 智美田中 利洋平井 都始子
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: JJMU.A.236

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抄録

精巣上体乳頭状嚢胞腺腫(papillary cystadenoma of the epididymis:PCE)は精巣上体に発生する稀な良性腫瘍である.常染色体顕性遺伝であるフォンヒッペルリンドウ病(von Hippel-Lindau disease:VHLD)に関連して発生するほか,孤発性にも発生する.悪性化は稀で局所切除が可能,あるいは慎重な経過観察も選択枝となり得る腫瘍性病変であるが,画像のまとまった報告はなくVHLDの既往がない場合には術前診断は難しく高位精巣摘除術が選択される場合も多い.今回我々は孤発性と考えられたPCEの1例を経験したので超音波画像を中心に報告する.症例は70代男性.右鼠径ヘルニアを疑われ撮像された造影CTで左陰嚢内に多血性充実性腫瘤を偶然発見された.超音波検査では腫瘤は左精巣の頭側に隣接して存在し,Bモードで境界明瞭,内部は精巣と等エコーを示し,石灰化と思われる音響陰影を伴う高エコー域を有していた.カラードプラでは腫瘤内の大部分に豊富なカラー表示がみられた.PCEは鑑別の一つに考えられたが傍精巣領域原発の肉腫を否定できないと考え高位精巣摘出術が施行された.病理組織学的に淡明な細胞質とクロマチンが増加した類円形,あるいはやや歪な形の核を有する細胞が乳頭状に増殖する腫瘍で明細胞型の腎細胞癌の転移とPCEの可能性が検討されたが,腎細胞癌の既往がなかったことからPCEとの最終診断に至った.

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