2012 年 4 巻 1 号 p. 9-14
本研究は、日常の看護実践で遭遇する倫理的問題に対する看護師の行動の背景にある思いを明らかにすることを目的として、臨床経験5~10年目の看護師10名を対象に半構成的面接による質的帰納的研究を行った。その結果、行動の背景にある思いは、【自らの看護行為の省察】から【患者の置かれている状況がよりよくなることを希求】を抱き、その行動によって患者から得られる【援助へのよい反応に満足】し、さらに【自らこうあるべき・ありたいと考える看護】という、倫理的問題への行動を導く思いがあった。一方、【考えの違うものや現状にもつ否定的な感情】は、それにより【主体的な問題関与からの回避的志向】を招き、【患者の関わりへの自責の念】を抱くという、回避的行動を導く思いがあった。しかし、【患者の関わりへの自責の念】は、 そこに留まらず、【自らの看護行為の省察】へとつながり、倫理的問題への行動を導き出すことが示された。