日本腎臓病薬物療法学会誌
Online ISSN : 2189-8014
Print ISSN : 2187-0411
原著
心不全患者におけるSGLT2阻害薬のinitial dip誘発に関連するリスク因子の検討
持田 知志平島 麻由美山口 利夫齊藤 幹央
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2025 年 14 巻 2 号 p. 197-205

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抄録

SGLT2阻害薬は、糖尿病や慢性腎臓病のみならず心不全治療に必要不可欠な薬剤となっており、その処方数は増加の一途を辿っている。一方、SGLT2阻害薬は、投与初期においてinitial dipが誘発されることが知られており、複数の関連学会から注意喚起がなされている。しかし、その詳細は未だ不明瞭な点が多い。そこで、心不全患者におけるSGLT2阻害薬のinitial dip誘発に関連するリスク因子について多角的な視点で検討し解析を試みた。対象は、2020年12月1日から2023年9月30日までの期間(2年10か月間)に、当院よりSGLT2阻害薬(DAPAもしくはEMPA)が投与開始となった心不全患者とし、電子カルテを用いて後方視的に調査した。解析対象は184名であり、initial dipによるeGFR変化率(%)に関連するリスク因子の検討においてeGFR(β:0.317,p< 0.001)およびループ利尿薬(β:-0.227,p= 0.001)に有意差を認めた。本研究より、心不全患者におけるSGLT2阻害薬のinitial dipは、eGFRおよびループ利尿薬がその変化率に対する独立したリスク因子である可能性が示唆された。心不全患者は腎機能低下例とループ利尿薬の使用例が多いことから、SGLT2阻害薬のinitial dipは、より高度に発生することが推測されるため、実臨床では薬剤師による副作用マネジメトが重要であり、SGLT2阻害薬の長期的な有用性を担保するための薬学的アプローチが求められると考えられた。

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© 2025 一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
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