日本腎臓病薬物療法学会誌
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症例報告
ラムシルマブからベバシズマブへの切り替え時に血栓性微小血管症を発症した切除不能直腸癌の一例
相楽 勇人藤原 崇史佐々木 勇人進藤 吉明田中 雄一
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2025 年 14 巻 2 号 p. 215-219

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抄録

ベバシズマブ(BEV)やラムシルマブ(RAM)を代表とする血管新生阻害薬の代表的な有害事象として蛋白尿や血栓性微小血管症(TMA)がある。今回、RAMの最終投与から2週間後にBEVを投与し、重度の血小板減少を伴う全身性TMAを発症した症例を経験したため報告する。

患者は50歳代女性。直腸癌術後肺転移再発に対してがん薬物療法を施行していた。前治療の血管新生阻害薬に起因した高血圧のため降圧薬を2剤服用していた。RAM最終投与日から2週間後の第1病日、BEV + FTD/TPI(トリフルリジン / チピラシル)療法を開始した。第15病日、BEV投与予定で来院時に数日前から下肢浮腫、腹部膨満感、体重増加(+5 kg)、高血圧を認めた。尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)1.52 g/gCre,Plt 30,000/µLであることや、貧血、LDH高値、ハプトグロビン低値、末梢血の破砕赤血球出現などの微小血管性溶血性貧血(MAHA)の所見からBEVによる全身性TMAと診断され入院加療となった。BEVの投与中止や体液・降圧管理を行い、Scr上昇を伴うAKIは出現せず経過した。第28病日に血小板、UPCRなどは改善傾向となり、退院した。

がん薬物療法中の血小板減少の鑑別として細胞障害性抗がん剤による骨髄抑制や発熱性好中球減少症に起因した敗血症性播種性血管内凝固症候群(DIC)などが挙げられるが、FTD/TPIによる重度の血小板減少は低頻度であることや、MAHAの所見からTMAの診断が可能であった。全身性TMAはネフローゼ症候群と同等の蛋白尿を呈しAKIの合併により重篤化することがある。被疑薬の早期中止によりAKIを回避することができた。

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