日本鳥学会誌
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原著論文
北海道周辺の4つのウトウ繁殖地における餌および雛の体重の違い
大門 純平伊藤 元裕長谷部 真庄子 晶子林 はるか佐藤 信彦越野 陽介渡辺 謙太桑江 朝比呂綿貫 豊
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2021 年 70 巻 1 号 p. 37-52

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抄録

北海道周辺の異なる海洋環境に位置する4つのウトウCerorhinca monocerata繁殖地において,2016–2017年に雛に持ち帰った餌と雛の体重(成長段階で補正)を調べた.松前小島,天売島,トド島の3繁殖地はそれぞれ対馬暖流の南部,中北部,北部に位置しており,トド島はオホーツク海の東樺太海流に由来する冷水塊にも近い.また,大黒島は沿岸親潮および親潮が流入する太平洋側に位置する.主な餌種は繁殖地間で異なっており,天売島およびトド島ではホッケPleurogrammus azonus 0歳,松前小島ではスケトウダラGadus chalcogrammus 0歳,大黒島ではサケOncorhynchus keta 0歳だった.加えて,イカナゴ属Ammmodytes spp. 0歳もしくは1歳以上はすべての繁殖地である程度利用されていた.エネルギー密度が高いホッケ0歳をよく持ち帰ったトド島では,1給餌あたりの餌重量も大きく,結果として雛の成長段階補正体重も重かった.海水温の違いがトド島と天売島におけるホッケの利用割合の違いや,大黒島内におけるサケ0歳の利用割合の年変化を説明するかもしれない.また,サケ稚魚ふ化放流事業に由来した餌資源量の地域差も,繁殖地間のサケ0歳の利用割合を説明するかもしれない.さらに,イカナゴ属は,北海道周辺の沿岸に広く分布するのでいずれの繁殖地でも一定割合利用されたのかもしれない.本研究は,海流による海水温の差や人為的影響が餌資源量の海域間差をもたらし,それが各地域で繁殖するウトウの餌ひいては雛の体重に影響していることを示唆する.

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