本稿は、監査人が倫理教育手法を考察し、評価者の倫理教育に向けた示唆を導出する。監査人の倫理教育では、ケース・メソッドに基づく参加型手法が重視されており、幾つかの体系化された意思決定プロセスがこの倫理教育手法で使用されている。また、倫理上の問題を理解するための分析枠組みや選択肢を比較考量するための手法も準備されている。
評価者の置かれた環境で特徴的な点は、評価者はしばしば同一業務でアカウンタビリティと業務改善という異なる評価目的が与えられ、局面毎に異なる利害関係モデルに直面することである。評価者は状況を読み解く能力がより求められ、また「線引き問題」や「相反問題」への対処を学ぶ必要があり、ケース・メソッドはその教育上のニーズに合致する手法である。ケース・メソッドによる倫理教育は「実践」から「制度」への道筋を整えるものであり、参加者による評価倫理ガイドラインの検討を通じて有意義なフィードバックを生み出すことが期待される。