日本評価研究
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17 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集:エビデンスの実践的活用とその方向性
  • 佐々木 亮, 正木 朋也
    2016 年 17 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー
  • -アイディア理論を用いた一考察-
    田辺 智子
    2016 年 17 巻 1 号 p. 3-18
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     日本において、エビデンスに基づくがん検診がなぜ実現しにくい状況となっているかについて、政治学で発展したアイディア理論を用いて分析を行った。日本のがん検診は世界的に見ても早い時期に導入されたが、その後、死亡率減少のエビデンスがあるがん検診を行うべきという新たなアイディアが海外から輸入され、既存のがん検診を見直す政策変容が進められた。分析の結果、この政策変容が不徹底となっており、エビデンスが確立したがん検診に加え、エビデンスが不十分ながん検診が広く実施されている状況が明らかとなった。

     その原因としては、死亡率減少という観点で有効性を評価すべきというアイディアが市町村レベルでは十分受容されていないこと、過去の政策が次の政策選択に影響を与える政策遺産が存在することが挙げられ、政策決定は必ずしもエビデンスのみに基づいて行われるわけではないという現実が浮き彫りとなった。

     今後も、他の政策分野を含め、エビデンスに基づく政策を阻害する要因について、さらなる分析が求められる。

  • 浅岡 浩章
    2016 年 17 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     国際開発分野で、開発効果に関する科学的に信頼性の高いエビデンスの欠如が著しいとの問題意識から、国際的に多数のインパクト評価が実施されてきた。特に過去10年間で評価や研究の実施数が急増し、信頼性の高いエビデンスは相当数整備されてきたと言える。その一方、評価結果の活用という点では改善の余地がある。

     活用が十分でない背景として、これまで取り組まれた評価の多くは研究者によるものが多く政策判断への活用意図が弱かった、外的妥当性の課題を克服できていない、システマティックレビューも援助実務者のニーズに応えられていない、加えて、途上国の政策決定者や援助機関関係者の意識醸成も十分でないといったことが挙げられる。

     国際開発分野において、エビデンスに基づく事業実施を推進するためには、JICAを含む援助機関はエビデンスの活用を実践し、好例を示していくことが必要である。

  • 津富 宏
    2016 年 17 巻 1 号 p. 33-41
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では、エビデンスを「つくる・つたえる・つかう」運動であるEBP(Evidence-based practice)の観点から、社会的投資のための評価ツールのひとつであるSROI(Social Return On Investment: 社会的収益投資)について批判的検討を行った。まず、SROIの普及状況について概説した後、SROIがCBA(Cost-Benefit Analysis: 費用便益分析)の一種であることを確認し、Nicholls et al.(2009)に従って、SROIの原則、SROIの手順について概観した。これを踏まえて、Arvidson et al.(2010, 2013)によるSROIに対する、的を得た8つの批判を紹介した。その後、SROIに関する具体例の検討を行い、SROI比率算定における恣意性やSROI比率がインフレートされる可能性を見出した。最後に、福祉国家論における社会的投資の役割についての考察を踏まえ、SROIは、投資対象としての事業や組織を評価するためではなく、EBPが長年にわたり行ってきたように、社会的共通資本としてのセクターの漸進的改善を支援するために用いられるべきであると主張した。

  • 政策教訓と拡大適用の事例
    佐々木 亮
    2016 年 17 巻 1 号 p. 43-54
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     2003年に設立されたアメリカの貧困アクションラボ(Poverty Action Lab)は現在までに770件に及ぶRCTを適用したインパクト評価を実施してきた。その実績を踏まえて、教育分野、保健分野、政治経済・ガバナンス分野のインパクト評価の総合的なレビューを行い、抽出された複数の教訓から構成される合計4本の「政策教訓」(Policy Lessons)を産出・公表してきた。さらに合計7例の拡大適用(Scale-Ups)を実現してきた。本報告では、いったいどのような政策教訓が産出され、どのような拡大適用の事例があったのかを解説するとともに、今後の日本の開発援助への示唆を得た。

研究論文
  • -監査人の倫理教育手法からの示唆-
    小林 信行
    2016 年 17 巻 1 号 p. 55-67
    発行日: 2016/11/17
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿は、監査人が倫理教育手法を考察し、評価者の倫理教育に向けた示唆を導出する。監査人の倫理教育では、ケース・メソッドに基づく参加型手法が重視されており、幾つかの体系化された意思決定プロセスがこの倫理教育手法で使用されている。また、倫理上の問題を理解するための分析枠組みや選択肢を比較考量するための手法も準備されている。

     評価者の置かれた環境で特徴的な点は、評価者はしばしば同一業務でアカウンタビリティと業務改善という異なる評価目的が与えられ、局面毎に異なる利害関係モデルに直面することである。評価者は状況を読み解く能力がより求められ、また「線引き問題」や「相反問題」への対処を学ぶ必要があり、ケース・メソッドはその教育上のニーズに合致する手法である。ケース・メソッドによる倫理教育は「実践」から「制度」への道筋を整えるものであり、参加者による評価倫理ガイドラインの検討を通じて有意義なフィードバックを生み出すことが期待される。

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