2019 年 19 巻 2 号 p. 19-34
日本の行政府における評価活動は、制度化が進み広く取り組まれている。しかし、評価の利用及び影響に関する研究は数少ない。そもそも、「評価活動は、何を、どのように私たちにもたらしうるのか」という問いに関連する先行研究の成果が、日本ではあまり知られていない。本論文は、利用概念から影響概念への発展の説明、及びその影響概念を用いた実証研究及びレビュー研究の成果を検討することにより、先の問いへの回答を探ることをねらいとしている。「何を」(評価が与える変化)に関し利用の分類化が進展する一方で利用が自己目的化するという課題を克服する為、影響概念は、評価の目的の射程を「社会の改善」にまで延ばした。また、従来あまり取り組まれてこなかった「どのように」(変化をもたらす要因と変化の間の連鎖)を包括的に把握しようとする取組が、各国で始まっている。今後、日本の経験が影響の経路の探求に寄与していく事を期待したい。