本稿の目的は、日本で十分紹介されてこなかった評価影響の理論を用い、評価がどのように利用され、組織や職員にいかなる影響を与えているかについて分析を行うことである。評価影響の理論では、影響の種類として、「認知・感情的アウトカム」、「モチベーション的アウトカム」、「行動的アウトカム」、「一般的影響」があると整理されている。事例としては公共図書館における業績測定型の評価を取り上げ、7館の公共図書館を対象としたインタビュー調査を基に評価影響の発現状況を分析した。分析の結果、公共図書館では、職員・組織の両面において多様な評価影響が生じていることが明らかとなった。また、評価影響の発現経路としては、評価が契機となってサービスの見直し・改善が実現する「改善ルート」、年度の目標達成に向けて意識・努力が行われる「目標達成ルート」、評価を外部への説明に利用する「対外説明ルート」の3種類が観察された。
日本の行政府における評価活動は、制度化が進み広く取り組まれている。しかし、評価の利用及び影響に関する研究は数少ない。そもそも、「評価活動は、何を、どのように私たちにもたらしうるのか」という問いに関連する先行研究の成果が、日本ではあまり知られていない。本論文は、利用概念から影響概念への発展の説明、及びその影響概念を用いた実証研究及びレビュー研究の成果を検討することにより、先の問いへの回答を探ることをねらいとしている。「何を」(評価が与える変化)に関し利用の分類化が進展する一方で利用が自己目的化するという課題を克服する為、影響概念は、評価の目的の射程を「社会の改善」にまで延ばした。また、従来あまり取り組まれてこなかった「どのように」(変化をもたらす要因と変化の間の連鎖)を包括的に把握しようとする取組が、各国で始まっている。今後、日本の経験が影響の経路の探求に寄与していく事を期待したい。
平成26年の独立行政法人通則法の改正により、新たな独立行政法人制度が登場した。同制度においては「政策実施機能を最大化」するとの観点から、適切な業務の実績評価と適切な目標策定のために、政府の統一的な指針が示されている。しかし、現実には、目標の記載内容が不明確、抽象的なものがあり、評価を適切に行うことが難しい。その上、実際の評価実務において、限られた情報及び限られた人員と期間の中で、適切に評価を行うことは、評価担当者に負担がかかり「評価疲れ」が指摘されている。評価の質を担保する上で、評価に必要な要素を漏れなく、過不足なく、評価を行う際に適切に織り込むことは不可欠である。本稿は、こうした独立行政法人制度における評価の理念と現実を踏まえ、独立行政法人制度における実績評価のさらなる適正化を目指し、実績評価モデルを提案する。本モデルを活用することにより、評価担当者は、評価で不足している要素を検出でき、適切な評価実施に貢献するものと考える。
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