抄録
Fettermanによるエンパワメント評価は、評価の概念と技術を使い「自己決定能力」を身につけるプロセスを提供し、変革を支援するものである。それは受益者を含む当事者グループが、自らが継続的に評価を行うことを通して、エンパワメントしていくプロセスである。そこでは、評価専門家は査定者ではなく、ファシリテーター、評価手法のトレーナー、人々の代弁者などの役割を担う。エンパワメント評価は変革とエンパワメントのアジェンダがある事業に適していると考えられ、開発援助の社会開発プロジェクトや国内のNPOによる公益事業に適用可能である。従来型の評価と併用することにより、社会の多元的な視点を取り入れた評価が可能になり、地縁、血縁を越えた自発的なコミュニティの発展を考えるひとつの契機となり得る。今後は我が国においても事例を積み重ねることにより、理論、方法論の更なる検証が必要になるであろう。