抄録
事業評価の理論的関心は手法の選択に係わるもので、「定量的」対「定性的」手法のパラダイム論争がその中核を占めてきた。そこでの中心的課題は評価結果の科学性、客観性、一般化可能性であったが、評価の有用性の視点から両者の実践的な統合を提起したのがMichael Q.Pattonの実用重視評価理論である。この理論は、評価の有用性を結果の活用で測るものとし、評価者の基本的な役割として結果の活用に強い関心を持つ利害関係者の特定化と、評価プロセスへの参加を通じる当事者意識の向上を掲げる。本論文では、はじめに実用重視評価誕生の背景となる論争について概説した後で、実用重視評価の基本的な考え方の紹介、その実践の例示および問題点の指摘をする。最後に実用重視評価の日本における活用に関する課題に触れる。