日本菌学会会報
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論文
集合住宅におけるハウスダストの真菌相に関する研究
戸矢崎 紀紘
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1998 年 39 巻 2 号 論文ID: jjom.H09-45

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抄録

 集合住宅9戸より毎月1回,1年間にわたり部屋毎に採取したハウスダスト533試料から19,716株の真菌を分離・同定した.検出真菌全体の真菌数平均は,9.2×104 CFU/gであった.検出真菌の59.4%は不完全菌類であり,主な真菌はPenicillium属1.2×104 CFU/g,Phoma 7.7×103 CFU/g,Cladosporium 7.0×103 CFU/gであった.月別検出菌数から1年間の変動をみると8月と3,4月に大きなピークを持つ2峰形のパターンとなることが分かった.ハウスダストの量ならびに菌数は家族構成人員,居住年数,家具占有率により異なるが,最も菌数の多かった試料は7人家族で17年居住した世帯の1.7×105 CFU/gであり,最小は5人家族,居住年数8年の4.0×103 CFU/gであった.カーペット類はダストポケットといわれるくらいハウスダストを集積するが,床材別にみた試料中の菌数の比較において,毛足の短いカーペットは天然材,化繊材に関係なく菌数に差はなかったが,毛足の長いカーペットの試料は1.3×105 CFU/gと検出数が最も多かった.一方,最小は畳間からの試料の6.8×104 CFU/gであった.部屋の使用形態と真菌の検出状況をみると,外気の影響を受ける玄関に通じる廊下からの試料が最も多く,1.2×105 CFU/g,次がダイニングキッチンの試料,最小は居間の試料であった.また,掃除機の使用年数が1年以下から3年までと短い場合に検出菌数は8.0~8.2×104 CFU/gと少なく,かえって5年以上使用した掃除機を用いて集めた試料から1.2×105 CFU/gと,より多くの真菌が検出されることが分かった.掃除機による掃除の回数と菌数の間には差は認められなかったが,雑きん掛の実施回数が多いほど検出菌数は少ないことが分かった.最後に床材に対する高周波処理の除菌効果を検討した結果,処理後1~2ヵ月を経過すると効果が消滅して処理前の真菌数に戻ることが分かった.

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