2019 年 60 巻 2 号 p. 23-36
菌根性きのこはマツ科やブナ科などの森林樹木の根系上に外生菌根を形成し,宿主植物と相利共生するきのこ類である.本菌群はそのような生態学的重要性に加え,マツタケやトリュフに代表される食用価値の高い菌種を多く含む経済学的重要性を有した菌群である.しかし,菌根性きのこは腐生性きのこ類と比較して難培養性であり,様々な基礎研究や応用研究の材料となる菌株がごく限られた分類群でしか得られておらず,分類や生態に未解明の要素が多い.本稿では,菌根性きのこ類の中でも特に林産資源として重要な食用種を多く含むAmanita属(タマゴタケ類),Boletus属(ヤマドリタケ類),Tricholoma属(マツタケ),およびHygrophorus属(ユキシロ)を対象に,筆者が取り組んできた分類や生態,および培養技術の開発に関する一連の研究について論じた.