2023 年 31 巻 2 号 p. 65-73
2013年の障害者雇用促進法の改正により,障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の規定の新設と(2016年4月施行),精神障害者の雇用義務化が実現した(2018年4月施行).これらの法改正を受け,雇用される精神障害者の数は大きく進展している.本論文は,その後も法改正を重ねる障害者雇用促進法のうち精神障害者に関する規定を解説するとともに,精神障害者に対する合理的配慮が問題となった裁判例を検討するものである.障害者雇用促進法のうち雇用義務制度と差別禁止・合理的配慮の規定を取り上げ,それぞれの規定の対象となる障害者の範囲の違いを明らかにしたうえで,雇用義務制度に関する近年の法改正の内容と,差別禁止や合理的配慮規定に関する基本的な考え方を解説した.裁判例については,解雇と復職に関する2つの事案を紹介し,労働法上の基本的な考えを示したうえで,それぞれについて検討を加えている.