産業精神保健
Online ISSN : 2758-1101
Print ISSN : 1340-2862
31 巻, 2 号
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特集 働く精神障害者への合理的配慮をめぐって
  • 田中 克俊
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 63-64
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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  • 長谷川 珠子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2013年の障害者雇用促進法の改正により,障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の規定の新設と(2016年4月施行),精神障害者の雇用義務化が実現した(2018年4月施行).これらの法改正を受け,雇用される精神障害者の数は大きく進展している.本論文は,その後も法改正を重ねる障害者雇用促進法のうち精神障害者に関する規定を解説するとともに,精神障害者に対する合理的配慮が問題となった裁判例を検討するものである.障害者雇用促進法のうち雇用義務制度と差別禁止・合理的配慮の規定を取り上げ,それぞれの規定の対象となる障害者の範囲の違いを明らかにしたうえで,雇用義務制度に関する近年の法改正の内容と,差別禁止や合理的配慮規定に関する基本的な考え方を解説した.裁判例については,解雇と復職に関する2つの事案を紹介し,労働法上の基本的な考えを示したうえで,それぞれについて検討を加えている.

  • 田村 綾子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 74-78
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    2018年の障害者雇用促進法の改正施行により,精神障害者が身体・知的障害者と同様に雇用率の算定基礎に位置づけられた.障害者権利条約の理念に基づき,雇用者には,障害を理由とする差別の禁止や合理的配慮の提供が求められており,精神障害者の合理的配慮の適切な提供のためには,雇用者及び職場の上司等が社会モデルに則り障害者の個性や能力を活かせる環境作りや調整を行う必要がある.また,精神障害者(メンタル不調者等を含む)への支援を適切に行うことは,精神障害者の就業を通じた自己実現に繋がる.その際,障害者が自身の精神疾患や障害の特性を理解して対応できるようになることと併せて,仕事に求めるものや職務内容及び力量を認識し,職場上司や支援関係者との対話に参加できることが重要である.これらを支援するために精神保健福祉士等の専門職を含む支援関係者には職場内外での連携が求められる.

  • ~企業人事の立場から~
    境 浩史
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 79-83
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    民間企業における雇用障害者数は年々増加している.その中でも,精神障害者は他の障害区分よりも増加傾向にあるが,雇用後の定着率は他の障害区分よりも低い傾向にある.一因と考えられるのが精神障害に対する受入れ企業の知識・認識,合理的配慮提供に対する障害者および受入れ企業の理解である.合理的配慮は,当事者から提供者である企業への申し入れを基本に相互の合意形成により提供されるが,実際の運用となると当事者自身や企業の認識・理解が十分でないことが原因で合意形成が成り立たないこともある.その中でも,精神障害者への合理的配慮は個別性が非常に高く,企業としても事例の蓄積も少ないことから過去の事例がそのまま適用されるとは限らないケースが多くある.企業人事担当者の立場から,精神障害者への合理的配慮の実際と課題を中心に考察する.

  • 高野 知樹
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    精神疾患により休復職する労働者や精神障害者手帳をもつ労働者が増加しているなか,外来診療においても,合理的配慮,安全配慮,両立支援など,様々な働き方に関する行政施策が打ち出されている.まずはこれらの適正な理解が必要であり,架空事例を提示し解説した.特に合理的配慮については,障害や疾病を理由に特定の業務を免除する,ということではなくより「働いてもらうため」の配慮を探索することが重要なのだろう.こうした考え方が適正に浸透することは,障害や疾病に限らず,多様な労働者に対し生産性を高める働き方を模索するという社会に近づくことにもつながると思われる.一方で,主治医として日常診療に追われるなか,なかなかこれらの概要を適正に理解する機会や時間も十分に確保できていないのも現実であり,焦眉の課題と思われる.

  • ―産業医の立場から―
    鎌田 直樹
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    現在我が国における障害者雇用率は障害者数の実態を反映し上昇傾向である.また,精神障害においては障害を有する者の就職率は高いとは言えない状況である.このような中,障害を持つ方への合理的配慮は大変重要である.配慮を検討するに先立ち,医療機関で必要な支援,職場で必要な支援を明確にする必要がある.そのためには,社内の関係者が関わる場面では疾病性(疾患によりもたらされる諸症状),事例性(症状により引き起こされる職場での問題)をしっかりと確認することが望まれる.また,産業医の視点から考察すると,企業,従業員,医療機関にもそれぞれ課題があるものと思われる.業種,業態,企業や事業場の規模に応じて提供できる内容に違いはあり,課題も多いが,合理的配慮の成功例,問題例を産業保健職間の研究会などを通じて共有していくことも精神障害を持つ方の社会復帰の可能性を高めていくことにつながるものと考える.

  • ソルト
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    私は一般枠での正社員の転職を7回経験し,8回目の転職で障害者枠での職を手にし,現在に至る自閉症の当事者である.19年間一般枠にこだわって,システムエンジニア,経理職などに就いたが,周囲との人間関係が上手くいかず退職に追い込まれ転職を繰り返した.はじめに,一般枠で就職してから退職に至るまでの経緯について,産業医やキャリアカウンセラーとの相談,カミングアウトにより上司や同僚から受けたパワーハラスメントの実情も含めて実体験を記載した.その次に,障害者枠による現在の職場で得られている合理的配慮について,実際に起こったトラブルと会社側の支援への動きについて述べた.最後に,一般枠と障害者枠に関する,就労のメリットやデメリットをそれぞれの支援体制の違いに着目してまとめ,継続就労を実現するための職業上の課題と対処方法について考察した.そして,ダイバーシティ&インクルージョンに期待を寄せて結びとした.

  • ―産業保健専門職による支援の実務と役割―
    辻 洋志
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    障害を持つアメリカ人法(ADA)は合理的配慮規定を有する世界初の包括的な差別禁止法として1990年に米国で制定され,病気や障害を持つ労働者の職場復帰支援や両立支援に大きな影響を与えた.2008年に改正され権利保護の対象は広く,また明確化された.機能障害と能力障害を明確に分けつつ,適格者,本質的な職務,主要な生活活動,主要な身体機能,相当制限,機能障害軽減手段,合理的配慮,話し合いによる合意プロセス,過重な負担をキーワードに構成される.合理的配慮に関する事例対応は健康診断/医学的評価と提供可能な職務の身体精神負荷の評価を行い,話し合いによる合意プロセスを経て,必要な合理的配慮を同定,提供と共に目標を設定し,その後は観察しつつ配慮内容を適宜修正する.医師は医学的職務適性評価を軸に支援を行っている.本来行われるべき合理的配慮の不提供は事業主に罰則があり,HR部門や,産業看護職,産業医,外部機関が支援に当たる.

文献レビュー
  • ―スコーピングレビュー―
    金森 悟, 小島原 典子, 江口 尚, 今村 幸太郎, 榎原 毅
    原稿種別: 文献レビュー
    2023 年 31 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2023/06/20
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    電子付録

    目的:本研究は,デジタルヘルス・テクノロジを用いた介入による労働者のメンタルヘルスへの効果や脱落・遵守状況を検証したメタアナリシスをマッピングし,研究されていないギャップを特定することを目的とした.

    方法:PubMedにて労働者,デジタルヘルス・テクノロジ,メンタルヘルス,メタアナリシスに関するキーワードで2018年以降の文献を検索し,スコーピングレビューを行った.文献から抽出したデータは,研究デザイン,対象者,介入内容などとした.研究の質はAMSTAR 2を用いて評価した.

    結果:採択した4件におけるアウトカムへの効果は概ね小さい~中程度であった.また,脱落率の高さを示すものもあった.研究の質はいずれも信頼性の評価が極めて低~低であった.

    考察:未検討の対象があること,用語や定義が統一されていないこと,研究の質の低さなどの課題があり,質の高いシステマティックレビュー/メタアナリシスが必要である.

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