2023 年 31 巻 2 号 p. 79-83
民間企業における雇用障害者数は年々増加している.その中でも,精神障害者は他の障害区分よりも増加傾向にあるが,雇用後の定着率は他の障害区分よりも低い傾向にある.一因と考えられるのが精神障害に対する受入れ企業の知識・認識,合理的配慮提供に対する障害者および受入れ企業の理解である.合理的配慮は,当事者から提供者である企業への申し入れを基本に相互の合意形成により提供されるが,実際の運用となると当事者自身や企業の認識・理解が十分でないことが原因で合意形成が成り立たないこともある.その中でも,精神障害者への合理的配慮は個別性が非常に高く,企業としても事例の蓄積も少ないことから過去の事例がそのまま適用されるとは限らないケースが多くある.企業人事担当者の立場から,精神障害者への合理的配慮の実際と課題を中心に考察する.