抄録
口腔白板症および口腔扁平苔癬の臨床診断のもとに生検あるいは切除生検を行ったそれぞれ285部位, 72部位について臨床診断と病理組織診断との不一致について検討した。その結果, 口腔白板症での診断不一致率は13.4%であり, 病理組織診断で扁平上皮癌と診断されたものが最も多かった。それらは舌に多く, 臨床型は erosiva type が大部分を占めていた。一方, 口腔扁平苔癬での診断不一致率は44.4%で, 不一致例では口腔白板症と病理組織診断されたものが多く, 次いで非特異的潰瘍であった。不一致例には扁平上皮癌と診断されたものが2例含まれており, いずれも歯肉に生じ, びらんを伴っていた。これらのことから, 舌でびらんを伴う口腔白板症と診断される病変では, 生検が必須であり, また口腔扁平苔癬と臨床診断されたもののうち, 非定型的な病変では生検が必要と考えられた。