日本口腔顔面痛学会雑誌
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総説
顎関節症患者を取り巻く諸問題への心身医学的な対応
和気 裕之
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2008 年 1 巻 1 号 p. 27-33

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抄録

本論文では, 顎関節症の治療を困難にしている慢性疼痛, 咬合異常感, 不定愁訴, 心身症の病態について概説した.
現在, 顎関節症患者の多くは, 歯科医が単独で診療しているが, 著者は, 精神科医と連携して診療を行っている. このような連携診療システムは, リエゾンと呼ばれている. 今回, 著者が慢性疼痛, 咬合異常感, 不定愁訴および心身症に対して行っている心身医学的なアプローチを紹介した.
患者は, 以下の4群に分類して対応している. A: 自覚症状を説明出来る他覚所見が存在しないケース, B: 自覚症状と他覚所見の関連性が低いケース, C: 身体疾患と精神疾患が併存しているケース, D: 心身症の病態ケース. 対応は, AとBは歯科および医科の身体疾患に起因している可能性が低いため, 身体面への積極的な治療は控えて, 病態の説明や保存的な治療で経過を診る. そして, 患者の自覚している不眠や憂うつ感等が見つかれば, その問題を取り上げて精神科へ紹介し, 連携して診療することを提案する. また, Cは, 精神科等と連絡を取りながら並行して治療する方針をとる. Dの狭義の心身症ケースは, ストレスの自覚を促し, 心身相関を理解させ, 心身の負担の軽減を薦める. また, 自律訓練法や漸進的筋弛緩法等のリラクゼーション法を指導し, 必要に応じて薬物療法 (抗不安薬·抗うつ薬等) を併用する. 顎関節症患者の治療では, 多面的な評価と対応が重要であることを強調した.

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© 2008 日本口腔顔面痛学会
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