日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
急性冠症候群により生じた口腔顔面痛の2例
村岡 渡岡田 明子大泰司 正嗣鈴木 建則中村 岩男中川 種昭和嶋 浩一
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2008 年 1 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

症例の概要: 症例1: 患者は51歳, 男性. 通勤時駅のホームで冷風にさらされた際, 右側の下顎部痛を自覚. その後も朝の通勤時に同様の痛みが出現するため当院歯科口腔外科を受診した. 歯科的には特記すべき所見がないこと, 歩行時の痛みの誘発という特徴から心臓性口腔顔面痛を疑い当院循環器科に精査を依頼し, 不安定狭心症と確定診断された. 症例2: 患者は60歳, 男性. 両側側頭部の痛みと開口障害を自覚し, 両側顎関節部および両側咬筋部まで痛みが広がり食事摂取困難となったため, かかりつけ歯科医院からの紹介にて当院歯科口腔外科を受診した. 両側咬筋に圧痛を認めたものの訴える疼痛に見合う所見ではなく, その他に歯科的な特記すべき所見がないこと, また胸部焦燥感を伴う痛みの訴えをすることから心臓性口腔顔面痛を疑い当院循環器科に精査を依頼したところ, 心筋梗塞と診断された.
考察: 疼痛に見合う歯科的所見がないことや痛みの性状により, 胸部痛の有無にかかわらず心臓性口腔顔面痛を鑑別診断に含める必要があると考えられた. また, 当科で用いている非歯原性口腔顔面痛鑑別のための「痛みの構造化問診表」は診断の一助になると思われた.
結論: 本疾患は内科的救急疾患であり, 早期診断が生命予後に影響を与えることから本症例のように胸部痛を伴わない場合でも特徴的な症状に遭遇した場合, 早期に適当な機関に紹介することが歯科医師としての責務であると考えられた.

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© 2008 日本口腔顔面痛学会
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