日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
粘膜圧迫により疼痛の軽減がみられた三叉神経に生じた持続性ニューロパシー性疼痛の2例
松香 芳三熊田 愛前川 賢治水口 一窪木 拓男
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2008 年 1 巻 1 号 p. 55-59

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抄録

症例の概要: 今回報告の2症例では, 灼熱性の慢性疼痛が上顎臼歯部周囲歯肉に数年間継続しており, 疼痛は主訴の部位のみに観察され, 関連痛は観察されなかった. 疼痛部位に局所麻酔薬の注射を行ったところ, 疼痛の完全除痛ではないが, 一時的な鎮痛効果が観察された. また, 脳内の器質的な異常は観察されなかった. 以上より, 三叉神経に生じた持続性ニューロパシー性疼痛と診断ができる.
この2症例に対して, 抗うつ薬, 抗てんかん薬, 抗不安薬, 消炎鎮痛薬など種々の投薬を試みたが, 劇的な効果は見られなかった. 一方, シーネを応用した疼痛部位の粘膜の圧迫が何らかの鎮痛効果を示すことが観察できた.
考察: 三叉神経に生じた持続性ニューロパシー性疼痛に対し, 粘膜の圧迫が疼痛軽減に効果があるという報告は我々が渉猟する限り, みられなかった. 粘膜を圧迫することにより, 触覚を伝達する速度の速いAβ線維の活動が誘発され, Gate controlを惹起し, 鈍い疼痛を伝達する速度の遅いC線維の伝達を抑制するのかもしれない.

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© 2008 日本口腔顔面痛学会
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