日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
口腔顔面痛を契機として発見された巨大な後頭蓋窩腫瘍の1例
渡邉 広輔北原 功雄青野 楓松本 邦史今村 佳樹野間 昇
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2021 年 13 巻 1 号 p. 37-42

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抄録
症例の概要:症例は74歳女性.X−5年より両側上顎臼歯部の鈍痛と側頭部の頭痛を自覚し,近歯科医院を受診したが異常は認められないため経過観察となった.側頭部の頭痛,上顎左側臼歯部の痛みが徐々に悪化してきたため,X年3月に,原因不明の痛みのため本院ペインクリニック科を紹介来院した.初診1か月後より上顎左側臼歯部に発作痛が出現したことからMRI検査を施行した.頭部MRIでは左側後頭蓋窩領域に腫瘍性病変を認めたため,某脳神経外科を紹介された.同年5月全身麻酔下に後頭蓋窩腫瘍摘出術が施行された.同年8月,当科受診時には左側上顎臼歯部の疼痛および側頭部の頭痛は消失し経過観察となった.
考察:本症例は,経過から後頭蓋窩の巨大な髄膜腫による二次性三叉神経痛を伴う慢性の口腔顔面痛・頭痛と診断した.5年前から初診1か月までの頭痛については,頭痛および発作痛が発見の契機になったこと,後頭蓋窩髄膜腫摘出後に頭痛が消失したことから「脳腫瘍による頭痛」と診断された.一方,初診1か月以降の上顎左側臼歯部痛みは「二次性三叉神経痛」と診断した.このように多様に臨床症状が変化したことから診断に苦慮した.
結論:慢性頭痛または脳神経症状がみられる場合には,二次性頭痛または二次性三叉神経痛を引き起こす頭蓋内疾患を鑑別診断する必要があり,スクリーニングにはMRIが必須であると考えられた.
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© 2021 日本口腔顔面痛学会
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