日本口腔顔面痛学会雑誌
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症例報告
系統解剖実習用遺体にみられた星状神経節ブロックを困難にさせうる一例 左総頸動脈蛇行
井上 卓俊山本 徹
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2021 年 13 巻 1 号 p. 43-47

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抄録

症例の概要:肝硬変を主死因とする81歳男性.星状神経節ブロック(SGB)施行の際,刺入部位の高さとなる第5―第6頸椎レベルでの,左総頸動脈の強い蛇行と随伴する迷走神経および交感神経幹の蛇行所見を有する献体を経験したため若干の知見とともに報告する.
考察:本症例ではSGB施行の際,胸鎖乳突筋の触診による通常の位置での総頸動脈の拍動を確認するのは困難であり,血管内誤注入による局所麻酔薬中毒を招く可能性があると考えられた.また,交感神経幹の大きな蛇行から,第6頸椎の横突起付近に局所麻酔薬を注入させることは可能であるが,SGBが十分に奏功しない可能性も考えられた.本症例で疑われた頸動脈蛇行症は通常,解剖学的に右側が好発部位であるが,本症例では左側に認め,極めて稀な例であった.超音波ガイドにより総頸動脈などの解剖学的構造物を視覚的に捉えることが可能であるが,頸部解剖の知識は重要である.
結論:本症例は解剖実習用遺体から,SGBの手技を困難にさせうる一例として左総頸動脈の蛇行症例を示した.SGBを行うにあたっては,常に潜在的解剖学的偏位・変形の可能性を考え,必要ならば超音波ガイドを用いるなどの慎重な姿勢が患者の安全につながる.

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