日本口腔顔面痛学会雑誌
Online ISSN : 1882-9333
Print ISSN : 1883-308X
ISSN-L : 1883-308X
原著論文
ラバーダム使用における持続的な開口が咬筋に及ぼす影響
飯田 崇渡邉 航介石井 優貴吉田 一央岩﨑 正敏榊 実加小峯 千明神尾 直人岡部 達小見山 道
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 15 巻 1 号 p. 13-18

詳細
抄録
概要:歯科治療時の大開口をきっかけにして咀嚼筋の筋・筋膜痛等の顎口腔領域における障害が認められる.本研究では,歯科治療中に生じる持続的な開口が顎口腔領域へ及ぼす影響に関する臨床的知見を得るため,歯科治療中において持続的な開口が必要なラバーダム防湿を用いた歯科治療が,咀嚼筋の圧痛へ与える影響について検討を行った.
方法:根管治療を受ける41名の被験者を対象とし,ラバーダム装着前,撤去後における自力最大開口量,無痛最大開口量,強制最大開口量,両側咬筋の触診を行った.咬筋の触診部位はラバーダム装着前に圧痛を認めた場合は同一箇所の測定とし,ラバーダム装着前に圧痛を認めない場合は両側咬筋表面に設定した測定部位にて計測を行った.
結果:ラバーダム撤去後の自力最大開口量,無痛最大開口量は,ラバーダム装着前と比較して有意な増加を認めた(P<0.05).根管治療を受けた患者7名(17%)において治療前に咬筋の圧痛を認めたが,治療後にその圧痛は消失した.また,根管治療を受けた患者の4名(10%)において治療前に咬筋の圧痛を認めなかったが,治療後に咬筋の圧痛を認めた.根管治療を受けた患者の30名(73%)はラバーダム装着前後において咬筋の圧痛に変化を認めなかった.
結論:歯科治療時における持続的な開口は筋伸展訓練に類似した運動であるが,顎顔面領域の痛みを変化させる可能性も示唆された.
著者関連情報
© 2023 日本口腔顔面痛学会
前の記事 次の記事
feedback
Top