日本口腔顔面痛学会雑誌
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原著論文
非歯原性歯痛の診断までにうけた治療歴と医療費についての検討
坂本 英治石井 健太郎大島 優中嶋 康経江崎 加奈子塚本 真規一杉 岳横山 武志
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2016 年 9 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

背景と目的:歯科領域の慢性痛に悩む患者の実態についての報告は少ない.本検討では,非歯原性歯痛患者の現状と診断に至るまでの経過と治療歴及び費やされた医療費について明らかにすることを目的とした.
方法:2011年4月から2015年9月に九州大学病院歯科麻酔科外来を受診した非歯原性歯痛患者が対象である.電子診療録と医療面接から情報を抽出した.抽出した情報は一般的な情報に加え,病悩期間,歯科・医科の受診歴,これまでの検査,治療内容とその効果の情報を抽出した.さらに検査,治療に関わる費用を歯科診療報酬規定(平成28年度改定)に当てはめて算出した.
結果:対象患者は64名(男性11名,女性53名)で,平均年齢55.0±13.8歳であった.病悩期間は平均49.6±60.9か月であった.歯科,医科の受診歴は,平均3.71±1.94件であった.治療,検査では,歯内処置が48名(75%)に,抜歯が29名(45.3%)に行われていた.それまでの平均除痛率は11.3±14.51(%)だった.それまでに費やされた医療費は219,948±238,869.5円であった.
考察:非歯原性歯痛患者は,診断までに,多様な治療を受けている.1人当たりの医療費がおよそ22万円とすれば5,958億円になり,年間1,441億円の医療費が費やされていると試算される.非歯原性歯痛に対する診断治療のための施策は急務であると考える.

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