2011 年3 月に発生した東北地方太平洋沖地震以後,地域公共団体の防災情報は主要な避難情報源となっている。各市のホームページから閲覧できるハザードマップ(防災時の安全地域図・津波浸水予測図)は防災教育の第一段階として有効な手段である。沖縄県は過去100 年以上に渉り,大地震による津波を経験したことがない。 しかし,閲覧経験のある住民は23.4%と半数以下である.そこで本調査では,このハザードマップシステムがどの程度県民の不安を軽減するのかその有効性を縦断的な調査で検討し,さらに沖縄県民のハザードマップ閲覧率を上げる対策を考察した。協力を得られた住民57 名に対してハザードマップと防災知識が含まれた質問紙を提示し,不安の程度と避難行動の積極性の変化を調査した。その結果,不安群の人数が全体の29.3%減少し,最も不安が高い群の人数も9 名から3 名に減少した(-6 名)。さらに自由記載などの分析から,避難行動を妨げる第一要因としては避難場所の知識不足による不安が挙げられ,沖縄県民に対するハザードマップ使用による効果が認められた。さらに,沖縄県民のハザードマップ閲覧率を上げる対策として,県民の就業事情の配慮や具体的なハザードマップ防災教育の工夫の必要性も示唆された。