薬剤疫学
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会長講演
医療情報システムと医療の質
大山 良治
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2016 年 21 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

最近では,医療分野の IT 化の進展に伴い,各医療施設の医療情報システムが広まり統合されることにより大規模医療データベースが構築されるようになってきた.日本政府は,病気の治療や健康診断の結果などの医療情報を「ビッグデータ」として活用するための新制度を早ければ2018年にも始めたいとしている.これら大規模医療データベースを使いこなすには,データベースの特徴をよく知りデータを抽出精製できるデータサイエンティストとそのデータを使ってバイアスのない科学的根拠のある正確な医薬品情報を作成できる薬剤疫学の専門家の養成が急務であり,それが医療の質向上への貢献になり,結果として医療費抑制にも貢献すると考える.薬剤疫学の発展が医療の質の向上と密接に関わりあっている.臨床の現場では,情報過多の中で正確で有効な情報を得て臨床の場に活かすことが重要課題となる.その実践方法の一例として,実際に行った一病院情報システムを用いての Nested ケース・コントロール研究では,日本ではカルシウム拮抗薬と心筋梗塞の関連は認められないとする仮説において,有意差が認められず,仮説は否定できなかった.しかし,調査規模を拡大すれば有意差を認める可能性が大きくなることが推測される.有意差を認めると仮定した場合,理由の詳細は不明だが,やはり適応による交絡が働いている可能性が考えられる.結果として,日本の病院データベースを利用して欧米に準じた薬剤疫学研究を行うには,複数の病院による共同研究を,医師の協力の下でプロスペクティブに行う必要があり,病院データベースのみを情報源とした時に生じるバイアスを避けるために,必要な情報を入手することが研究結果の信頼性に繋がると判明した.また,医療機関の医療の質を知り改善するために医療の質を示す指標 QI (Quality Indicator) を測定し,現場での PDCA サイクルを回し医療の質の改善方法の検討を行った.QI 値に影響を与える要因を各医療機関間で比較すると,多くの交絡因子等の調整が必要となるが,同一施設で同じ方法を用いて時系列で QI を測定すれば,多くの交絡因子は除かれて,医療の質の改善方向が見いだせる可能性があると推察される.

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© 2016 日本薬剤疫学会
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